こども学習支援事業レポート
事業名
三重県名張市 ひとり親家庭学習支援ボランティア事業(市委託事業)
キーワード
オンライン双方向対面ラーニング
事業ポイント
ボランティアのみの学習支援に加えて、インターネットを用いたオンライン双方向対面ラーニングを取り入れ、ボランティア参加条件のハードルを下げた
参加者・ボランティアの増加、運営総事業費の削減
事業の概要
項目 | 内容 |
開始時期 | 平成30年4月 |
対象年齢 | 小学生・中学生 |
事業対象の要件等 | 名張市内在住のひとり親家庭の小学1年生~中学生 |
実施体制 | 名張地区まちづくり推進協議会(1名)
NPO法人まなびとステーション(2名) ボランティア(実施時3名程度) |
事業の立ち位置 | 地域活性化による ひとり親家庭支援包括事業の一部 (隠まちなかプロジェクト) |
実施場所 | 名張市社会福祉協議会(福祉まちづくりセンター) |
実施頻度 | 週3回(学習支援2回、こどもパソコン講座1回) |
ボランティア | 社会人・学生 |
- 事業経緯
平成30年度より双方向ラーニング導入。
従来は学習ボランティアによる対人指導のみ行われていた。 - 事業全体像
①「学習支援」②「学習習慣づくり」
③「こどもの居場所づくり」④「保護者相談」⑤「こども食堂」⑥「こども園」等の包括事業の一部として、①②③を目的に行われている。 - 事業対象者
対象者は市内のひとり親家庭における児童のうち実施場所へ通所可能な者 - 実施場所
学習の場だけでなく居場所づくりの目的もあり、市内の大型商業施設内にある福祉まちづくりセンターを低償で用いている。
- 学習科目
算数(数学)、国語(英語)、パソコン - 利用料
無料(ただし教材などは実費※科目ごとに1,000円程度) - ボランティア謝金
なばりまちづくり協議会より月ごとに清算
支援内容
- 学習指導
《学校学習支援》
オンライン双方向対面ラーニングを活用し、東京・京都の塾講師および国立大学の現役学生による個別指導と現場のボランティアによるサポートの二面で対応している。具体的には、市内の採択教材に準拠したドリルを教材として用い、ボランティアの支援により回答した内容を双方向対面ラーニングで添削を行うが、ボランティアでは説明が難しい部分を上記の手法でプロ講師や現役大学生が対応したりなどの連携をとっている。
《子どもパソコン講座》
小学生対象に、低学年クラスと高学年クラスを編成。隔週にてパソコンレッスンを実施している。 - 低学年クラス:作品作りを中心としたレッスンを行う。学期に応じて子ども達が自身で決めた目標(めあて)が達成できることや、家族へのプレゼント作成、またグループで相談しながらゲームを進めるなど、楽しみながらパソコン操作の習得を目指す。
- 高学年クラス:中学入学を見据え、パソコンを通してローマ字入力から簡単な英単語の学習や、インターネットモラルを中心とした検索やマナーを意識したメール操作など、次のステップへの準備期間も兼ねたレッスンを実施。
- 「学習支援」における本指導方法の経緯
当初、平坦地が少なく住居地が分散された名張市において、学習塾等に通学困難だが学習意欲の高い中学・高校生向けのオンライン双方向対面ラーニング(通称オンライン家庭教師)として企画された。しかし、ひとり親家庭の支援事業の一環として小学生を中心とし中学生までをフォローする集合型形式への転換に至ることになった。
これは、対象となる年齢が6~15歳と広く同一時間・場所で実施されるため、ボランティアになれる人材が教員や保育士など、こどもへの指導経験・指導内容の理解ができるレベルが求められていた。そのため、意欲があっても一般の方がボランティアに参加することが難しかった。それを解決するために、指導経験のない一般の方が説明困難になった際に双方向対面ラーニング上のプロ講師や大学生講師に任せることができるのではないか、また小学生などがパソコンやタブレットを用いるやり方のため、ゲーム感覚で取り組めるのではないかと考えた。 - ボランティアの養成・確保
ボランティアの募集は市広報や市内学校機関にて募集し、なばりまちづくり協議会が指導・管理を行っている。 - 教材
教材は市内採択教科書に対応したドリルを用いている。ドリルの選定はNPO法人まなびとステーションが行う。
事業実施体制
名張市 | 予算、広報での募集協力 |
名張地区まちづくり推進協議会 | 包括事業運営、市およびNPO法人まなびとステーション、ボランティアとの調整、保護者への連絡・相談 |
NPO法人まなびとステーション | 学習支援事業における連絡・調整、オンライン講師との調整 ボランティアとの調整、保護者への連絡・相談 設備提供・設備維持、こどもパソコン講座の運営 ※まちづくり協議会は包括事業運営全体がメインのため、学習支援事業の連絡調整については必要に応じてNPO側が対応するなど柔軟に対応している。 |
ボランティア | 学習支援全般を行うが、学習指導ができる者や低学年児童の対応のみ行う者など、人によって活動は様々である。 |
- 事業評価
国語・算数・英語・数学については、初年度のため客観評価は難しいが、参加児童およびボランティアはオンライン双方向対面ラーニング導入前よりも著しく増加した。また学生ボランティア等など幅も広がっている。
こどもパソコン教室は児童・保護者からの強い要望で2年目となり人数が2倍・クラス数もそれに伴い拡充された。 - 実施後の課題と解決
当初、参加者数増大にボランティアが対応できない状況が発生した、NPO法人まなびとステーションスタッフが一時的にボランティア支援を行い、以降ボランティア数の増大やボランティア自身の経験蓄積で解決できるようになっている。ただ、ITシステムに不慣れなボランティアも多く、児童は使いたいもののボランティア側がオンライン双方向ラーニングシステムに適切に誘導できないことも目立っており、マニュアルやラーニング事業者との連絡体制の整備、教育などが課題に挙がっている。